どうしても解きたい12の謎　　　　S.ウェッブ　　　　　青土社　　　　

ニュートンやデカルトは、科学的方法によってそれまで神秘のベールにつつまれていた「謎」が、次々に解明されたこともあって「いずれ人類はあらゆる宇宙、生命などの神秘を科学的に解明する日がくるであろう」という夢を抱き、人々も、その夢は確かにいつの日か遂げられると信じた。

ビッグバンによってこの宇宙が137億年前に生まれたこと、DNAによる遺伝の仕組、素粒子理論、そしてひも理論等々、確かに科学によって実に多くの謎が解明されてきた。

しかし、一方では我々が次々にこういった謎の解明を遂げるごとに、さらにそれを上回るペースであらたな謎が深まっていった。今や、我々の宇宙、生命に関する謎の量は、ニュートン、デカルトの時代の何千倍にもなってきている。

すなわち、例えばどれだけ我々人類がその生命科学の謎を探究してみても、わずか1つの細胞さえも作ることができない、という事実、あるいは我々が今、見ることができるのは宇宙を構成するわずか5％に過ぎず、残りの95％は未だに全くの謎だ！という事実によって今やニュートンやデカルトの夢は、かつてなく遠い夢になってきているようにも見えるが、しかし、ニュートン、デカルトの夢を追って、科学者達は今も日夜研究を続けている―――。

本書は、物理学者でありサイエンスライターでもある著者による、ニュートン、デカルトの夢を追う現代の天文学者達の研究の現状を詳細に述べた一冊だ。

ダークマター、ダークエネルギー、ニュートリノ、ガンマ線バースト、重力波、系外惑星、地球外文明といった計12の宇宙の謎について、現在どのような探究がなされているのかを、実証科学、実験科学的探究を中心に語っていく。

本書を読むと、今や宇宙科学研究は欧州LHCなどの巨大設備、宇宙に浮かぶ巨大観測装置といった実に大掛かりなものになっており、かつてガリレオが自ら作った望遠鏡で月を眺めて地動説の確信を得た時代の天文学とは全くことなったものになっているという事実を突きつけられるが―――。

際限なく大掛かりになる科学研究施設の果てに、いつの日か、ニュートン、デカルトの夢が実現する未来があるのだろうか。