はじめての宗教論 左巻　　　　　　佐藤優　　　　　NHK出版　

タイトルに「宗教論」とあるが、内容はキリスト教「神学」についての一冊だ。

著者は同志社大学で神学を学んだというなかなか変わった経歴の持主だ。著者によれば神学は少なくとも西欧においては「全ての学問を統合する学問」であり逆にいえば神学以外の学問は全て神学の補助学であるということになるという。一般的にいえば、「神学論争！」といえば「不毛な論議」だとか「結論のないヘ理屈論議」などと思われているが著者によれば「とんでもない」ということになる。

確かに、12世紀にオックスフォードやケンブリッジなどの大学が開設されたのはいずれも神学校としてであったといった歴史を考えれば、あるいは科学も、「神の言葉」を知る為に発達した自然哲学が起源であったことなどを考えればキリスト教神学が、人類文化史においていかに重要な役割を果たしてきたかということは理解できるのだが−−−。

(今のところ)人間にとって証明できない「神」の存在を大前提にしてできたキリスト教という宗教のなかで組み立てられた学問体系、という「矛盾」の上に構築された学問がキリスト教神学であるという我が思い込み（？）からすれば、本書で著者が縦横無尽に展開するその碩学振りには感心はするものの、どうしてものめりこめないのは、我が孫が、ポケモンの何百だかになるというキャラクターの名前をスラスラと言えるのと同じで、「凄いことは凄いけれど、何の役にたつのか−−−」と、蓮舫さんのような気分になってしまう所為だろうか。