台湾人と日本精神　　　　蔡 焜燦　　　　　小学館　　

東日本大震災に際して国際規模の義援金が寄せられたが、もっとも多くの義援金をよせてくれたのが台湾の人々であり、しかもその総額は他の国々からよせられた義援金の額の総計を上回るものであったことは中韓などの反日、嫌日の国々に囲まれた日本にとってはある種の驚きをもってあらためて台湾の人々の親日を実感することができた出来事であった。

（しかし、震災の慰霊式に当たって野田政権は、中国からの横槍に気をつかうあまり、台湾からの参列者代表を代表献花リストから外し、一般献花者として扱うという実に非礼な扱いをしたことを我々自身の問題として忘れてはならない）

本書の著者は、日本が台湾を併合していた時期に日本式の教育を受けた「旧日本人」である台湾生まれ世代である。

日本は台湾を欧米列強のように植民地にした訳ではない、併合時点で台湾島に住んでいた人間は自由に中国人になるか、日本人になるかの選択ができたが、自分達は日本人になる道を選んで日本国民として誇りをもって生きる道を選んだのであって、慰安婦問題も、最近韓国がいうような「強制」によるものではないという。

日本は台湾に教育制度、生活インフラの多大な貢献をした。今、台湾が中国本土に比べて遥かに経済、文化の面で発達しているのはそういった日本による様々な投資、文化の洗礼があったからであるという。

戦後、蒋介石に率いられた中国本土からきた連中、そして中国共産党は、日本人がやったことをことごとく悪くいうことによって、自分達を正当化しようとしているが、生粋の台湾人にとっては、彼等こそ台湾を食い物にして私腹を肥やしているのであって、日本こそが真の友人だ！という。

李登輝からはじまった台湾の民主化、親日ムードも馬英九という外省人（大陸出身で蒋介石一派とともに台湾にきた一世、あるいは二世世代）になってはじまった経済優先の為の中国への接近、そして反日キャンペーンで雲行きがあやしくなっているが、李登輝総統時代に書かれた本書を読めば、今回の震災で示された我々日本人の真の友人である台湾の一般の人々の本音が聞こえてくるように思う。

著者たちが示してくれる日本、そして日本人に対する親愛の情、信頼感に応えられるような日本には最早なっていないのではないか−−と思う時、著者がいう「日本人よ胸を張りなさい！」という言葉の重みをひしひしと感じる。