げんれい説法　　　　　　中西玄禮　　　　　白馬社　　　

法事でもなければ坊さんの法話など聞くこともないが、やはり若い坊主の法話などを仕方なく聞かされると、「何を言ってんだ！この若造」などと思ってしまうのは、まあ、こちらがそれなりに年を取ってきた所為もあるかもしれない。

噺家にしても「長生きも芸の内」ということもあるのだろう、若手より年寄りの噺家の方がいくらか上手いように思うのと同じだろうか。

本書の著者は、京都の永観堂禅林寺法主、昭和16年生まれというから、年恰好、肩書ともに法話を聞いてみようという気にはなりそうだ。

この人は「出前説法」という名で、自ら様々なところへ出かけていき、説法をしているという話を先日、NHKテレビで見たことあって興味もあって本書を手にとってみた。

肩書から言えば、高僧の部類に入る方なのだろうが、寺の跡継ぎとして生まれ、坊主になるのがいやで、いやで仕方がなかった高校生の時、針路相談をした恩師の言葉に心動かされて修行の道に入った、といったざっくばらんな自らの体験に始まる決して偉ぶらない法話、説法は、中々面白いというか、はっと気付かされることが多い。

坊さんというのは生涯をかけて、仏典や経を学んでいるからだろうか、確かに凡俗の我々が気付かないような人生訓、人生論、仏教哲学などの知識が豊富なようで、そういう物に基づく法話に触れてみるのも偶には面白い。(ちょっと、相田みつをの日めくり的な軽さもなくはないが）

(10年4月発行)