知的唯仏論　　　　宮崎哲弥/呉智英　　　　サンガ

対談本というのは余り好きではない。何人かがしゃべったことを速記して一冊の本を仕上げてしまう、というところに何となくその本の作りがいい加減なものではないか、と思ってしまうのは、著者がウンウンと頭を絞りながら何日かかけて一冊を仕上げる−−−という「古い」本の作り方のイメージがこびりついているからだろう。

本書も確かに、そういう意味では宮崎哲弥と呉智英という二人の評論家（？）の対談で一冊作ったというなんとなくイージーな本というイメージを持って手にとったのだが、その対談の内容の質はかなり高く、二人の碩学振りからくる「知識の宝庫」的なところには惹かれたし、まあ、内容に免じて中々の一冊という評価をしてもよいと思う。

宮崎哲弥は自らを仏教者だと言っているが、ごりごりの信者という訳ではなく比較的外側から仏教を見ることができる人物のようである。仏教者ではない、という呉智英との仏教に関する対談は、時にはオタク的な仏教マンガ論で盛り上がり、時には仏教の根本教義に対する容赦のない批判に及ぶなど、仏教に関心を持つ読者にとっては中々貴重な対談集になっている。

対談形式の中で、仏教を語らせたら自分がナンバーワンという自負を持っているらしい二人の丁々発止が繰り広げられ、二人の碩学振りには感心させられるが、中でも宮崎の論旨は、それなりに終始一貫、貫徹しているのに比べると年上の呉智英は、どちらかというと「相槌役」に回っているし、その主張もかなり荒削りのものが多いところなど、「対話本」の醍醐味が味わえる。

釈迦の思想と原始仏教の関係、上座部仏教と大乗仏教のそれぞれの特長、西洋哲学と仏教の相似と対比等々、宮崎という仏教研究者に吹き捲られて、そんなに理解できていないのに、酔ったような気分にさせられた一冊というところだろうか。