政と源　　　　　三浦しをん　　　　　　集英社　　

最近立て続けに作品を発表している著者の、他の作品とはちょっと毛色の違う作品だ。

掲載されていたのが少女小説雑誌だったということもあってそういう読者層を意識したからこういう毛色の小説になったということだろうか。少女向け小説っぽいイラストが使われているのもまたユニーク。

源二郎と国政は、ふたり合わせて146歳の幼なじみだ。つまみ簪職人の源二郎は妻に先立たれ今は弟子の徹平と暮しており、元銀行員の国政は、妻が娘夫婦の家に出ていってしまったためにやもめ暮らしだ。

この二人の老人と撤兵、そして家を出て行った国政の妻、といったところが絡んでの東京下町の人情模様が6篇のエピソードで語られていく。

大きな変化がある物語ではなく、朝の連続ドラマのような展開だが、江戸情緒や、下町の市井で生きる人達の喜怒哀楽を、手馴れた調子で紡いでいく作者の手腕を、十分楽しめる。