「少年倶楽部」短編選　　　　　金子光晴他　　　　　　講談社　

｢少年倶楽部｣は大正3年から昭和37年まで少年向けとして発行されていた月刊誌だが、月間マンガ誌よりはやや高級な読物としてこの時代の少年達には絶大な人気をほこったメディアであった。

そんな「少年倶楽部」だけに執筆陣も豪華であり、又、彼等も「少年倶楽部」を読んで育った世代でもあったから、執筆依頼には腕によりをかけてこたえていただけに、名作が多かった。

そんな中から22編が選ばれているが、執筆陣の顔ぶれは実に豪華だ。川端康成、横光利一、菊池寛、金子光晴、サトウ・ハチロー、山岡荘八などの大家、山中峯太郎や椋鳩十、といった名前も見える。

22編いずれも、当時の少年達が心躍らせて食い入るように読んだであろう、友情や勇気の物語、愛と正義の美談といった道徳的な物語である。

人をおもいやることの大切さ、卑怯な振舞いをしない真っ直ぐな生き方、といったものを少年達に教えようという、大作家達の情熱もあいまって、いずれの物語も、今の時代だからこそ、尚更、若き日の純真無垢な自らの少年時代がなつかしくおもいだされる、なんとも懐かしさの溢れる短編集である。

只、現代の少年達にとっては、果たしてこの短編選の名作が、果たしてどのように訴えるのか、彼等も又、大正、昭和の少年達と同じように感激するだろうかと思う時、やはり、かなりの戸惑いを覚えないではない。

到底、この種の少年物が現代の子供達には理解できんないような気もするし−−−常套句になってしまうけれど「昔は良かった」ということになるのではないか、という気もしないではない。