骨を彩る　　　　　彩瀬まる　　　　　　幻冬舎　　　　　

人は皆、自分以外の人には決して共有してもらえっこない哀しみというものを抱えて生きているのではないだろうか、その哀しみが本当はどのようなものなのかとなると、本人にもつかみ得ていないのは、自分の骨の色は、他人には勿論、自分自身も見ることはないものの、自分の体幹に厳然として存在していることを、自分の骨に染みこんだ色のようなものとして常に意識しているからではないか−−−。

86年生まれのナイブーな感性に優れた新人による5編の連作は、いずれも、それぞれの人が抱える決して他人には理解してもらえないような人生の哀愁をテーマにした物語である。

妻を亡くし、その忘れ形見である娘と暮す男にとっては、時と共に妻の面影は薄れていくことが、避けようのない哀しみの増幅となる。

その娘にとっては、記憶すらない亡き母の存在が、自分が両親の揃った「普通」の家庭で育っていないという疎外感となり、その疎外感は、ある信仰宗教の祈りの儀式が、「普通ではない」といってクラスメートから疎外されている同級生の逃げようのない疎外感との共感となって―――という具合に、5つの物語が、それぞれ緩い連鎖をもって美しく、しか哀しく語られていく。

若き女流作家の習作といった趣があり、どちらかといえば好き嫌いの激しい作品かもしれないが、そのしっとりとした雰囲気は、このもし好もしく思えた。

（13年11月発行）