囚われない練習　　　　　平井正修　　　　　宝島社　

著者は、安倍首相や、石破幹事長が座禅の為に通っているという禅寺、臨済宗全生庵の住職だ。

キリスト教の教会に行って祈っている、とか団扇太鼓を叩いてお題目を唱えているのと、禅寺で座禅を組んでいるというのとどれほどの違いがあるのかは良く分からないが、確かに日本では政治家は、教会やうちわ太鼓よりも、座禅の方がよほど、大衆受けはしそうだ。(座禅にはソフィスティケイトさを抱くのは、日本人ばかりではないようだが）

只ひたすら座って精神を統一をはかる座禅は、今や日本人のみならず外国人までもが、その愛好者が増えているという。やはり多くの人々が座禅に神秘性を感じているからではないだろうか。

禅僧達の言葉である「禅語」も短い文の中に、人生論や死生観などのエッセンスが込められているとはいうものの、一般の人生訓のように平易な文章で綴られている訳ではなく、寧ろ難解な文章で書かれているところに座禅同様の神秘性と摩訶不思議な魅力を備えていると言ってよい。

本書は、そんな禅語を元にした法話を纏めた一冊だ。決して高僧ぶらず、一介の禅僧の立場から語る、万人向けの人生指南書といった趣だけに、若い人達にはかなり受け入れられるのではないかとは思うが−−−。

但し、相田みつおの日めくりカレンダーと同じで、決して間違ったことを言っている訳ではないのだろうが―――心に響くかどうかは、人それぞれという気もする。