つぎはぎ仏教入門 呉智英 筑摩書房
仏教研究者、仏教学者と言われる人々は皆仏教徒だとは限らない。
著者も自らを「信者ではない」といっているが、多くの仏教関係の著作を残していることを考えればその立ち位置はどういうことになるのだろうか。
まあ、仏教信徒による仏教書よりも、仏教信者ではない「仏教研究者」の仏教解説の方がなんとなく信用できるような気がするのは、自分も又、仏教をある種の哲学とか論理体系として「興味をもってはいる」ものの「宗教」というものに、胡散臭さを感じてしまう懐疑主義者だからかもしれない。
そういう観点から著者の仏教に関する博識度には驚嘆するところがあり、本書を一種の「仏教関連薀蓄本」として読むと中々面白い。
イエス自身がキリスト教徒ではなかったのと同じように、ブッダは仏教徒ではなかった。仏教の諸派はどのように形作られ、ブッダの教えとどこでどのように変わっていったのかといった点などをたとえばブッダが説いた「空」の考え方が、中国で「無」という考え方に変わった経緯、そしてその違いなどに言及して説いている部分など、薀蓄は特に面白かった。
体系的に仏教を知りたいという訳でもないが、なんだか気になる、といった読者にとってはお勧めの一冊と言えるのではないだろうか。
（11年7月発行）