キャリアポルノは人生の無駄だ 谷本真由美 朝日新書
キャリアボルノとは随分と聞きなれない言葉だが、著者による造語のようだ。著者によれば自己啓発本の類のことらしいが、その幅は広くドラッガーや松下幸之助の啓発本、大前研一のビジネス指南書の類から、「億万長者になる方法」などといった指南本的なものまで全てを含めて、キャリアボルノと定義づけているようだ。
「キャリアボルノは人生の無駄だ」という刺激的なタイトルから想像されるように、「指南本」の類は、どれをとっても役に立たない---人生の無駄だ！と一刀両断という趣旨の本書だが---当然のことだが誰でも気付くことながら---「キャリアボルノは人生の無駄だ」というフレーズそのものが、読者に対する「指南」そのものであり、それはとりも直さず、「本書は人生の無駄だ」ということを著者自身が一冊を通して主張していることになる。
なんとも悪い冗談のような一冊であり、読書評にも値しないのではないか---と思うが。
著者のブログが下になっての一冊だそうで、著者が気楽に自分の言いたい放題に書き散らしたブログ記事を今更、新書一冊にした出版社の意図がどうにも不可解だ。
色々な指南書はムダだと断定するが（タカさんもその意見には概ね賛成だが）、その割には、なにかというとイタリア賛美の意見というのも、一体著者の価値観なり人生観は、どういう基準なのかと思うし---やっぱり読んでみて「ムダだった」という観を強くさせる一冊だった。
（13年6月発行）