人殺し医療 ベンジャミン・フルフォード ㏍ベストセラーズ
日本でもつい最近、ノバルティスが薬の治験データを捏造したとか、武田薬品がデータ項目を捜査し血圧降下剤の誇大宣伝をしたといったニュースや、医療過誤やその隠蔽問題などが新聞を賑わせているが、そういった事例を含め、それらの不正によって製薬会社や医療機関が得た不当利得の額は、桁違いの大きさだ。そう言うつみ重ねが、日本の社会保障費の高騰につながっている。
国民の命が守れるならば社会保障費の高騰も許容できるが、医療関係企業の犯罪によって不当に医療費が掠め取られているとなれば、これは由々しき問題であるにも関わらず、こういった不正がまともにとりあげられた試しはない。巨大企業、巨大理研集団である医学界、医薬品界の政治力が、マスコミも政治も、そして取締り当局さえも抑え込んでしまっているからだ―――。
この手の「告発本」は時々、出版され一部では話題になるが、それらの中には、データの根拠が薄弱なものも多く、中々、それが「告発」になって本格的な医療制度改革につながらない。
本書は、そんな中、アメリカと日本の医療がいかに不正に満ちていて、患者の健康や命を守るためではなく、医療関係者の利益を図るためだけに施されているかを、豊富なデータに基づいて告発している。
アメリカでは、4600万人の無保険者がいて、彼等が人体実験ともいえる薬の治験データ蓄積の為にいかに過酷な取扱いを受けているかといった実例や、薬害エイズ事件では当初からエイズ患者を作るためとしか思えないような、エイズウィルス入りの血液製剤がばら撒かれた実例などからしても、本書の記述は「トンデモ本」とは全くちがった真実性に満ちている。
血糖値やコレステロール、血圧の正常値をちょっと低くするだけで、医者も医薬品業界も多大な利益が上がる。診断基準の変更でそれだけ病気が早期発見できるとか、予防になるというならともかく、今までの実績では何の効果もないのに医療費だけがあがっているというのが実情だと著者はいう。医学界はこういった声にまともに答えたことがないというだけでも、著者のいうような「人殺し医療」が実は、日米でどうしようもないところまで進行しているのかもしれない。
（13年4月発行）