歴史でわかる科学入門 W.F.バイナム 太田出版
人類を人類足らしめている物の一つは、自然に対する好奇心ではないだろうか。太古の人類が星空を見上げ星々の運行の規則性をみつけその理由を考えた時、あるいは一年という一定周期毎に咲く花や実果物の規則性に興味をもった時、人はそれまでの類人猿とは違った生物、人類になったと行ってもよいのではないだろうか。
人の文化は、そういった太古の人々のもった疑問と、その答えを後世に伝え、先人から伝えられた知識を、より更新して更に後世に伝えるという営みをこの数千年に亘って行ってきた。
「科学」も又、そういった人を人たらしめている人だけが持つ文化と言ってよいのではないだろうか。
本書は、ギリシャ以前、バビロニアや中国、インドに始まる自然哲学としての科学知識の発展の系譜を、科学発展のメルクマールといえるような業績を残した先人たちの業績を辿ることによって俯瞰した一冊だ。
いわゆる科学史といってよいものだが、中学生、高校生レベルに合わせ、分かり易く説いており、又、その記述が、それぞれの科学者のもった疑問をもとにおこなわれているという意味で、科学全般についての概論といえるものになっている。
物理学は物理学、生物学は生物学といった形で、細切れになりがちな科学知識だが、一般読者にとっても、一度、本書によって「広く浅く」科学の全体像をおさらいしなおすことは、極めて有用だと思う。
（13年12月発行）