55歳からのハローライフ 村上龍 幻冬舎
若手とは言われないが、かといってまだ老年にまでは間がある時期、かつてならたそがれ族だとか夕暮れ族と言われる年代が、50歳半ばといったところだろうか。
人生、色々あったし、まだラストチャンスでいくらか変われる余地が残っているようでもある、微妙なお年頃の男女を主人公にした5編の物語からなる本書は、NHKでもドラマ化されたが、村上龍の手慣れたストーリー構成に、すでにその年頃を過ぎて10年以上がたつけれど、「そういわれてみると、あの頃の自分も、そんな心境に近いものがあったなぁ〜」とか「そういえば、あの頃の同年代の女性陣にはこんなタイプもいただろうなぁ〜」となんだか懐かしい共感を覚えた。
早期退職を選んで全く覇気を失った夫と離婚、結婚相談所を訪れて、後半生をともにできる男性との出会いを求める主人公が直面する現実、とか定年退職したらキャンピングカーを買って妻との全国旅行を夢見ている主人公が、いざキャンピングカーを購入する段になって、妻に「あなた一人で旅に出て！」と激しい抵抗に合う話とか、人生、たそがれ時に近づいて、いままでの自分の人生が、このまま後半生に続いていってよいものなのか―――と悩む、男女が小洒落た物語の中に描かれる。
中々面白い一冊だった。
（12年12月発行）