日本人に「宗教」はいらない ネルケ無方 ㏍ベストセラーズ
よく日本人ほど宗教にこだわりのない国民もいないと言われるが、さて「あなたの宗教は？」という質問をされたとしたら、「無宗教です」と答える人よりも「仏教です」と答える人の方が多いかもしれない。
というのも欧米などでは「無宗教」という答えはまるで「私は人間ではない」と言っているようなものだ、と言われているらしいと聞いているから、まあ「仏教」と答えておけば無難だろうという程度のものであって実際に仏教を信じている訳でもないというのが本当のところではないだろうか。
仏教の教義などには詳しい訳ではないし、クリスマスや結婚式はキリスト教式、初詣や七五三には神社に行き、葬式や墓参りは仏式でやってなんの違和感も持たないのが日本人ということになるが、宗教熱心な外国の人々からみれば、「日本人は宗教に関してなんといい加減なのだろう」ということになるが、日本人の多くは、キリスト教にしてもイスラムにしても、あるいはヒンドゥーや、日本以外の仏教など等の余りにも束縛だらけの宗教を考えれば、なんだかこの「いい加減さ」が心地よく感じられるのも事実だ。
禅の修行の為に日本を訪れ、今は禅寺の住職をしているというドイツ人の著者は、そんな日本人の宗教観こそ理想的なものだという。
例えば仏教と神道という二つの宗教が争うことがないどころか融合しあい、また日本人の心の中にもその二つが何の矛盾もなく共存している。こんなことは、いがみ合っているイスラムとキリスト教だとか、ヒンドゥーなどの国では考えられないが、そういう日本人の宗教観こそが、日本社会の融和を生み、日本人の自然観、人間観の基になっているのではないかというのだ。
内側から見て気付かなかった日本人の宗教観を、ドイツ人という外側の目で教えてくれる何とも興味深い一冊である。
（14年2月発行）