帰化人が見た靖国神社のすべて 石平 海竜社
日本に帰化した著者の石平さんは元中国人、そんな人にそもそも靖国神社とは何であるかを教えられる、というのも変な話ではあると思うが、ことほど左様に今や日本人自身が、靖国神社を知らないのだから、中国や韓国による首相の靖国参拝に対する難癖的な批判に対しても、まともに反論できる日本人が少ないのも宜なるかなということなのかもしれない。
最近参拝した安倍首相でさえも、靖国神社に参拝し「不戦の誓い」をしてきたなどと言っているが、石平氏によれば、靖国神社とはそもそも国を守るために戦う兵士たちが国防精神の柱とするべき誓いの場であり、又、万一戦場で倒れた場合に彼等を国として祀る場なのだという。その靖国の意味を知っているならば、一国の首相が国防の為に倒れた英霊に参ることについて他国からの干渉に対して堂々と反論すべきだし、いい訳のような「不戦の誓い」などというごまかしを語る安倍首相は間違っているのだというのだから、ちょっとびっくりである。
この数十年、自国の英霊を慰霊するのに、外国の目を気にしなければならないという癖がついてしまった日本人の多くが、この「不戦の誓い」論法に逃げ道を見つけているというのは事実であり、石平さんに、こういった「そもそも論」を言われる、なんとも耳が痛いような気がするのは確かだ。
外国からいわれるばかりではなく、日本人自身が、靖国に参拝する人のことを「右翼」であるかのように言ってはばからないようになってしまっている現状は、一体奈辺に原因があるのかじっくり考えてみるための入門書として、本書の価値はあると思う。
（14年8月発行）