セブン 乾くるみ 角川春樹事務所
「イニシエーション・ラブ」の強烈などんでん返しトリックで度肝を抜かれたこの作家の作品ということでそれなりに期待していたが、期待は裏切られなかった。
「７」をテーマにした七つの物語からなる一冊だが、この作家（名前からすると女性かと思ったが、男性だという。そういえば、きわめて納得がいくところがおおい）大学の専攻は、理学部数学科というだけあって、いくつかの作品は、ち密に計算されたトリック構成や、ゲーム理論などが組み込まれていて、読者もそれぞれの作品にゲームに参加しているかのような気分で入れる、という面白さがある。
「ラッキーセブン」「ユニーク・ゲーム」は、おそらく作者が考案したとおもわれるゲームルールに基づくデスゲームだが、ゲームに負けると死ななければならないという、まるでロシアンルーレットのようなゾクゾクとする恐怖感と興奮を楽しむことができる。
作者が男性であると知って大いに納得がいったのが、「木曜の女」だ。1週7日間の間、毎日違う女性とのナイトライフを楽しむ男の物語という訳で、なんともポルノチックな性描写が展開するかと思うと、最後にとんでもないどんでん返しが用意されていて、「ヤラレタ―！」という痛快さが味わえる。
季節ごとにおかしくなる母親によって殺されていく兄弟、そんな母親を守りたいという長男坊が考え出したユニークな作戦とは―――という「一男去って」のトリックは、「なーんだ！」というほどのものでありちょっと荒唐無稽過ぎると思うものの、この作家の語り口のうまさとやはり最後に用意されたトリックに「ヤラレタ―！」という痛快さがあった。
気楽に楽しめる一冊である。
（14年6月発行）