弱者の戦略 稲垣栄洋 新潮社
生物の世界は弱肉強食、強い者が勝つという大前提の下にこの35億年、連綿と続いてきた―――というのは一面の事実ではあるが、それでは強い者しか生き残れないのかというと決してそんなことはない。
弱肉強食の大原則の下でも、弱者は様々な戦略を駆使して生き残ってきているではないかという本書の視点は、目からうろこの思いで面白く読んだ。
いやむしろ、複雑な食物連鎖の頂点に立っている強者は、その連鎖のシステムの一部が壊れれば、絶滅の危機にさらされてしまうことは、恐竜が隕石衝突という環境の激変によって絶滅してしまった例からもわかるし、むしろ「ひ弱い生物」ともいえることを我々の祖先だからこそ、その時期を生き残り今日の繁栄を手中にしたことを我々は知っている。
生物の生き残る為の最善の方策は、他のどんな競争相手もいない生物界の「ニッチ」に進出することだ。すなわち、ナンバーワンになることよりも、オンリーワンになることこそ弱者が取るべき戦略であるという。
その他にも弱者の戦略としては、「群れる」「逃げる」などの様々な方策がある。そういった弱者の戦略の数々が挙げられておりいずれも実に面白い。
そういった生物界における弱者の戦略にこそ、我々がビジネスなどにおいて参考にすべき戦略が隠されているのだという本書の主張に、おおいに納得させられた。
（14年6月発行）