ムラムラする宇宙 吉田直紀 学研教育出版
たかだか数十年の寿命しかもたない我々人類にとって無限の大きさを持つ宇宙の動きはまるで機械のように正確に運行している静寂不変の存在のように思えるものの、ビッグバンという大爆発により無限小の一点から生まれ、138億年後の今も絶え間なく膨張を続けているこの宇宙は、時間スケールや、その大きさのスケールを巨視的にみると実は「ムラムラしている」といってよいほど変化しつづけ、そしてゆらいでいるものなのだという。
ビッグバンから約3億年後、宇宙全体にほぼ均等に散らばっていた稀薄なガスが徐々に集まって、最初の星（ファーストスター）が生まれ、そこから今日の無数の銀河が織りなす「宇宙の大規模構造」が形作られてきたという説が、現在の宇宙論の中核をなしているが、そのファーストスター誕生をコンピューターシュミレーションによって最初に示したのが著者であり、そんな著者が語る、初心者向け宇宙論は、読み易く、又分かり易い。
天文少年であったという過去を持ち、今現在は、最先端の宇宙物理学者である著者が多くの一般の人達、少年少女達にも、宇宙の凄さ、面白さを知って欲しい！という熱情をもって書いた一冊であり、書かれた中身は最先端の宇宙知識であり充実しているが、決して難解ではなく実に分かり易い。
多くの宇宙好きにおすすめの一冊と言える。
（14年6月発行）