ディス・イズ・コリア 室谷克実 産経新聞社
大きな事件事故が起きる度に、なぜあんな大きな事故が起きてしまったのかと思わないことはない。
避けられなかったであろう偶然の結果で起きる事故もあるだろうし、明らかに人災ともいえる事故もあるけれど、「ああやっておけば」「こうしておけば――」といった後悔を伴わない事故はないといってよいだろう。
要は、事故が起きた場合には、その事故の要因を徹底的に洗い出し、できる限り原因となったであろう要因を取り除き、再び同じような事故が起きないような措置をとることこそ大切だということだ。
今年4月に起きた韓国の「セオウル号沈没」事故だが、その要因には様々なものが挙げられた。
すなわち、日本から安価で買い求めた中古のフェリーに安全基準を考慮せず無理な改造を加え、過積載のまま出港した事、更には、船は濃霧による出港時間の遅れを取り戻そうと危険な近道を全速力で航行し、しかも急旋回をしたためにバランスを崩し横転、沈没したのだが、そんな無茶な改造や、過積載、安全を無視した無茶な航海操縦が実は日常的に行われていたのは、船会社と港湾管理者との長年の癒着により、あらゆる安全規則が無視されていたからであり、又、運行会社を運営する新興宗教団体は利益追及を第一として安全を全く無視していたからである――――とありとあらゆる「人災」が重なったからだということが事件後明らかになっている。
これだけの様々な要因が明らかになれば、対処療法的な改善策を考えるだけではなく、海運に関するあらゆる社会構造を根本的に改革しない限り、再びこのような悲惨な事故が起きることは明らかだと考えるのが普通だと思うが、事故後の韓国社会は全くその方向に動いていない。
事故後半年が経過したが、この事件は今や、真っ先に逃げ出した船長に死刑求刑をすること、大統領が涙ながらに謝罪すること―――終息しようとしている。結局、官民癒着による安全無視、人命よりも個人の利益追及優先という、この事件で露呈された韓国社会の根本的な問題は何も改善されていないし変わる気配もない。
一体、なぜなのだろう。韓国在住30年以上、鋭く韓国社会の欠陥を指摘してきた著者による韓国論は、実に目から鱗の明快さで迫る。
著者によるこういった韓国社会批評は、すべて、韓国の主要メディアの記事から引いた材料からなっており、著者の個人的見解などを極力排除しており、極めて説得力がある。
韓国社会が抱えた実に気の毒ともいえるこういった問題だが、それを指摘なりアドバイスしようとすれば、只々感情的に反日感情をむき出しにしてくるであろうから、黙って見ているしかないような気もしないではないが－－－。
嫌でも付き合わなければならない隣国である韓国を知るために、大いに参考になる一冊だ。
(14年7月発行)