時間とは何か 吉永良正 日経サイエンス
月刊科学雑誌「日経サイエンス」から時間に関する記事をピックアップし、「時間の物理的意味とは」「宇宙と時間」「時間を測る技術」「人はどのように時間を感じるのか」の4章に構成しなおした一冊だ。
第一章、第二章は特に「そもそも時間とはなにか」という古代から尽きることなく続くいわば蒟蒻問答のおさらいという部分だが、やはり、この部分が一番、面白い。
現代宇宙論、量子重力理論がいうところの、ビッグバンの最初の瞬間より「前」には時間は「なかった」---という理論を知ってはいても、そもそも「時間がない」という状況が一体何なのかを理解できている人間は、世界に一体、何人いるのだろうか。
時間という次元は、なぜ非対称なのかという問題についても、「時間が非対称なのではなく、変化が非対称なのであって、我々の住む宇宙の上位の宇宙においては、時間は対称になっている―――」という理論も、これって本当に理解できている人が一体どれほどいるというのだろうか―――。
益々、訳がわからなくなってくるが、それだからこそ「時間とは何か」というテーマの本を、益々読みたくなる。
(11年8月発行)