宇宙の誕生と終焉 佐藤勝彦編集 日経サイエンス
宇宙誕生の最初の瞬間といえば最初の1プランク時間(1tp)である。
では1tpという時間はどれぐらいの長さかといえば1秒のマイナス44乗分の1というとてつもなく短い時間である。
同じ秒数で比較するならビッグバンから現在までの138億年を秒数で表したとしてもそれは指数でいえば17（10の17乗秒）に過ぎないわけだから、マイナス44乗分の1秒の短さのイメージがいささかでも理解できるかもしれない。
そんな、瞬間に起こったこと、すなわち「宇宙の誕生」についての現在の物理学が到達できた知見についての話には興味は尽きないが、それと同じように、現在誕生以来138億年が経っている宇宙がその将来においてどのようになっるのか―――いわゆる「宇宙の終焉」についても、興味は尽きない。
本書は、過去に日経サイエンスに掲載された宇宙の誕生から・現在・そして未来に関する研究に関する記事をまとめた1冊だが、宇宙物理学の専門家が、それぞれの研究分野の現在到達しえた知見に関して分かり易く、しかも詳しく語っており（いささか、難解過ぎる部分も多いが）なんともゴージャスな1冊となっている。
「宇宙誕生」と「宇宙の終焉」ばかりではなく、宇宙物理学の謎として研究が続けられている「ブラックホール」と暗黒物質や暗黒エネルギーといった「エネルギーの謎」についての最新知見もそれぞれ一つの章を立てて解説してあり、この1冊を読み通すのには2カ月近くかかってしまったが十分満足できた。
「宇宙の終焉」については、少し前までは、「ビッグクランチ」「ビッグリップ」「ビッグフリーズ」の3つのシナリオが考えられていたが、最新の知見によると、この宇宙は、どうもこのまま膨張を続け、銀河同士は遠ざかりその内、我々の回りには何も見えなくなるといった寂しい未来に向かっているということらしい。
誕生以来、10の17乗秒経った宇宙だが、この先、本書では、宇宙の行く末について100兆年後まで述べられている。すなわち本書によれば、宇宙は誕生以来、10の23乗秒以上存在し続けるらしい。
ということは、宇宙は、その寿命の中でみれば、現在はまだ誕生直後に過ぎないということらしい。
(13年12月発行)