杉本苑子の枕草子 清少納言著・杉本苑子訳 集英社
余りにも有名な枕草子だが、断片ではよく読んではいたが、通読したことがなかった。
やはり、注釈を頼りに原文で読むとなると―――という理由によるのだが、この杉本苑子による現代語訳ならば、清少納言という今から1000年前の女性の書いた日本が誇る名随筆を、実に気楽に読める。
本書を読むと、清少納言のことを思わず清少納言さん、と親しみを込めて呼びたくなるのは、彼女が現代に生きていたとしても、是非、お友達になりたいと思わせるほど、しっかりとした自我を持ち、自分の思いを素直に語れる人であると同時に、女性として又、人としての感性に優れ、それでいて人としての情愛や機微に秀でている女性だからだと思う。
改めて今回見つけた面白かったところをいくつかピックアップすると―――。
（第二十一段）将来の望みも目的もなくただ目先だけのぬるま湯につかったような幸福を本物と錯覚し、夫によりかかって暮らしている女たちを見ると、私は他人事ながら気が滅入る。―――やはり、人中に出し、世間というものの実態に慣れさせるべきだし、宮仕えのチャンスがあればどしどし出仕させるべきだ―――。（働く自立した女性バンザーイ！）
(第二十八段)明方に女のところから帰って行こうとする男が、いやにピシッと身づくろいしようとするのもあじけない。むしろ、女の方が気をつかって「すっかり明方になりました、お急ぎにならないと――」という位でなければ、情がないというものだ。(男というものは、コトが済むと直ぐに覚めてしまうものなのに―――清少さんには分からないでしょうなぁ〜）
(第二六八段)理解に苦しむのは男というものの心理だ。美人を捨てて、ブスを妻にするケースなど全く腑に落ちかねる。----もっとも、たいていの男は女の真の価値を見抜く目をもっていないが---。(女性だってそうでしょう―――清少さん！）
（第三〇三段）---つまり私は、働く女性たちの専用のマンションをつくり、その経営者に納まって彼女らの世話をやきながら晩年を過ごしたいのだ。（老後設計もしっかりとやっていたのですねぇ〜）
いや、本当に一度清少納言さんにあってじっくり話がしてみたいものだ。
(96年㋃発行)