ヤンキー化する日本 斎藤環 角川書店
イギリス人、フランス人、日本人の三人の動物学者がアフリカでチンパンジーの生態研究を行った。
それぞれが帰国後、論文をまとめて発表したのだが、それぞれのタイトルはイギリス人「アフリカチンパンジーの生態」、フランス人「アフリカチンパンジーのセックス」、そして日本人は「アフリカチンパンジーから見た日本」だったとか――。
日本人はなにしろ、日本人論だとか、日本文化論が好きだ。日本人は、自分達自身のことを論理立てて理解できていないことが理由だといわれる。
それだけに「武士道」にせよ「茶の本」にせよ、あるいは「菊と刀」にせよ、他人による分析によってようやく「なるほど」と納得してしまうというところがある。
本書もそんな日本人論の新手として中々面白かった。著者は、最近の日本の、政治、文化、あるいはお互いの人間関係等々の広い分野を支配しているのは「ヤンキー的」といわれる気質だという。
ヤンキーとは地方都市のコンビニ前でたむろしている若者たちに代表される気質のことであるという。ヤンキーは不良とは違い、伝統の祭りの担い手にもなるし、仲間を大事にし、先輩後輩のけじめもしっかりしているが、決して攻撃的ではなく、上京しようとか一旗揚げようともしないで、生まれながらのふるさとをこよなく愛するタイプ―――だそうだ。
現代の保守政治家やネトウヨといわれる連中も、あるいは「倍返し！」で人気のドラマに代表される「根性、正義、勝利」といった価値観を大事にする感性も、著者にいわせれば「ヤンキー的」だそうだ。
この「ヤンキー的」という切り口であらためて、日本人論、日本文化論を村上隆、デーブ・スペクター、隈研吾といった各界を代表する人物たちと語る対談集が本書だが、自分も日本人論好きな日本人の一人なのだなぁ〜と実感しつつ楽しめる一冊であった。
(14年3月発行)