朝日新聞「日本人への大罪」 西岡力 悟空出版
「日本軍は、戦時中に済州島でアフリカの奴隷狩りのように若い朝鮮人女性を軍令で捕獲・拉致し、強制連行した」という稀代の詐話師吉田清治の証言だけであれば、そのウソ証言を根拠として世界中で日本と日本人がここまで蔑まれることもなかったと思う。
この吉田のウソに塗り固められた告白本が出版された80年代には、まだまだ多くの、戦争を経験した日本人、朝鮮人の多くが生存していたのだから吉田のまるでサドポルノ小説のような話を即座に「あり得ない！」と反論する証言はいくらでもあつまっただろうし、まともに取り上げられることもなかっただろうから、今日あるような日本に対する不名誉な蔑みの非難などが起きることもなかっただろうから。
しかし、もはや取消しできないほどの悪評が世界中で信じられるようになってしまった原因は、一重に、吉田の証言を、裏付けも取らないで繰り返し記事にし、それのみか、吉田の証言に尾ひれをつけて、繰り返し「日本軍の悪行」のイメージを膨らませてきた朝日新聞の「反日プロパガンダ」活動があったからだ
83年からこの吉田証言に基づく数多くの記事を書き、日本非難のプロパガンダを繰り返し行ってきた朝日新聞は、吉田自身が自らの告白はすべてフィクションであることを認めた95年以降も、これらの記事を訂正することなく、「広義の強制性」などというすり替えによってあくまでも「日本による性奴隷」という国際的なイメージ作りに加担してきた。
その朝日が結局、これらの吉田証言に依拠した慰安婦報道が「誤報」であったことを認めたのは朝日の最初の記事が書かれてからなんと30年が経った昨年のことである。
この間に貶められた日本の名誉が、今や回復不能なところまで広がってしまったのは、宮沢発言や河野談話をはじめとする「まずは謝っておけばよい」といった日本政府の腰の定まらなかった姿勢や、日本人でありながら日本を貶めることに熱心な反日本文化人といわれる人達の所為でもあるけれど、その全てが、朝日新聞のこの間の一連の「プロパガンダ」がその源になっていることは明らかだ。
本書は、吉田の虚偽証言時から、その虚偽性を追求し続け、朝日新聞からは天敵扱いを受けてきた著者による朝日追及の詳細なやり取りを記したものだが、朝日新聞は、昨年夏の検証記事および記事取消し以降も、お手盛りの「第三者委員会」などを通じて、「記事の捏造はなかった」「国連人権委員会による日本非難に、朝日の記事の影響はなかった―――国連が勝手にやったことだ―――」などの言い逃れを、何の根拠も示さず、おこなっている。
その責任逃れ、居直りの姿勢は目に余るものがあり、多くの人々は「朝日は全く反省していない」とも感じているが、本書では、その点も、数々の資料などを挙げて詳細に伝えている。
本書の真の価値は、記事取消し後、さらにはお手盛り第三者委員会報告後の、朝日新聞の相変わらずの無責任な姿勢を追及している後半部分により多くあると思う。
「朝日は記事を取り消したのだから---」などと決して追及の手を緩めてはならないという、著者の追及の姿勢を、是非多くの日本人に読んで欲しいと思う。
(14年11月発行)