2015年中国の真実 宮崎正弘/石平 ワック
中国が主導する、1000億ドル（10兆円）の資本金を持つアジアインフラ投資銀行（AIIBA）にイギリス、フランス、ドイツ等が参加の意向を示しているという。
従来の世界銀行に対抗するインフラ銀行に日本、及びカナダはアメリカに気を使ったのか消極的といわれているが、大丈夫なのか？ この際、中国主催の金融枠組みの奉加帳に日本も記名しておくべきではないか―――といった議論も盛んだ。
AIIBの資本金の50%、5兆円は中国が出資することになっており、それはとりもなおさず、この巨大インフラ銀行の意思決定は、全て中国が行うということである。すなわち、インフラの投融資の決定権は中国がもっているということだ。中国が主導する銀行に出資しなければAIIB案件に日本は噛めない可能性が高く、それでいいのか？という意見もある。
一方、中国は共産党一党独裁の国であり、経済に関しても自由主義陣営では当たり前になっている国際会計基準とは程遠いブラックボックスが余りにも多いことは、中国の為替管理、あるいは国営企業の経営の不透明さ、総額500超円にも及ぶといわれているシャドーバンキングに代表される闇金融等々、投資をするには余りにも不透明でリスクが多いように見える国である。そんな中国主導のAIIBに出資などしたら、それこそ、出資金全額をうしなうようなことにもなりかねないという懸念もある。
アメリカの国債を一番保有しているのは中国であり、今やアメリカも中国にさからえない、等ともいわれるが、中国元の為替はすべてドルにペグしており、それでかろうじて信用を保っているということを考えれば、AIIBは、「ドルよさようなら、中国元よ、こんにちわ「」の第一歩という説もどうも怪しいようにも思うが－－－（所詮はドルというお釈迦様の掌で暴れる孫悟空ではないかとも思える）
何しろ、AIIB問題は、今現在の中国は、一体どうなっているのか？を正確に把握することがその第一歩となるであろう。
そんな意味で手に取った本書だが、発行が昨年9月と激動する中国をウォッチするという意味ではいささか新鮮さを欠くが、それでも中々示唆に富む指摘が多い。
1． 反腐敗に名をかりて進められている権力闘争の真の目的は何か、そしてその行く先は？
2． 習近平政権が米国に持ちかけた「新型大国関係」の現状と今後
3． 今後の対日関係
4． 中国の軍事力強化の現状と今後
といった問題について、中国ウォッチャーの二人が語り合うというスタイルで今後の日本の対アジア、対中国政策を示唆しており中々参考になる。
(14年9月発行)