朝日新聞 朝日新聞記者有志 文春新書
行政・司法・立法という三権に加えて、メディアを「第四の権力」などと呼ぶことがあるが、この第四の権力は時には前三権をも凌駕するほどの力を持っている。
その第四の権力の中でも朝日新聞の持っている権威はなぜか強大であり、朝日の論調が戦前戦後を通じて世論に大きな影響を与え、時には政権の命運を左右してきた。（戦前は軍国主義礼賛へ、そして戦後は一転して極端な左翼思想へと世論を誘導してきた朝日の影響力は実に大きなものがあった。
そんな、朝日新聞の権威が大きく揺らいだのが、2014年に立てつづけに起きた３大スキャンダル、慰安婦問題、吉田調書問題、池上コラム掲載拒否問題によってである。
本書は、朝日新聞内部から、この三つの大スキャンダルが起きた背景、その対処の仕方の失敗の原因といった点を追及したものであり、ある意味では、日本のマスコミ全体が陥っている病巣を解明するための貴重な資料ともいえるものだ。
社会の木鐸ともいわれる新聞、ましてその中でも自他ともに権威があるといわれていた朝日新聞の内部からの告発という意味で、期待して読んだが、これらの３大スキャンダルを生みだしてしまった根本的な原因が、朝日新聞社という組織内における、硬直化した官僚的組織、人事評価システム、派閥の暗闘等々といった日本的組織が陥り易い欠陥がその元凶である、という結論を聞くと、要するにそういった欠陥を自覚していながら、これらの事件が起きるまで、そういった組織の悪癖に染まっていた、あるいは無抵抗に従ってきた連中が、何を今更言い訳しているのか―――と感じないではない。
本書が指摘している朝日の社内システムに於ける問題点というのが、例えば、「社内カーストシステムともいわれる、部署あるいは支社間の差別」「特定の上司により人事考課」など幾つか挙げられてはいるが、それは朝日においては多少極端になっているということはあるにせよ、どこの新聞社、いやどこの企業にもあることでもあり、国際的に日本の評判を取り返しのつかないほどに棄損してしまった、慰安婦誤報や吉田調書問題の原因は「これだ！」というほどの物とは思えないし、内部の記者たちが、全ての原因がそこにあり、自社の危機的状況に対する反省が、せいぜいこの程度なのか―――と思うと、それこそ、こういった責任転嫁こそが、朝日のダメさ加減を如実に表していると思わないではない。
木村前社長のとんでもない責任逃れと大きな判断ミスの連続といった内幕を知り、又、それを押しとどめようという社内抵抗力もほとんどなかったということを本書で知れば知るほど、やはり、朝日新聞は再生不能、日本の為には廃刊の道しかないのではないかとすら思えてしまう。
（15年1月発行）