科学で勝負の先を読む W・バウンドストーン 青土社
カジノのルーレットに「赤黒」という賭け方がある。アメリカンタイプのルーレットの場合だと、緑色の0と00と以外の36個の数字は赤か黒かの2種類に色分けされており、次の目が、赤か黒かのいずれの数字になるかを賭けるという極めて単純な賭けなのだが、これが日本の丁半博打と同じように中々人気のある賭け方だ。
毎回の勝負が終わると、出た目とその色が大きなボードに表示されていくから客は、「赤が3回も続いたのだから次は黒だろう」とか逆に、「今、赤の波が来ているから、次も赤の目の可能性が高いだろう」などと考えて賭けることになる。
確率から考えれば次の勝負で赤が出るか黒が出るかは、常に当然47.4％ずつのはずなのだが－－－。
しかし、人々はこの丁半の出目は確率だけでは測れないと考えがちだ。というのも、過去にはラスベガスで赤が26回連続したという記録があったし、実際、赤なり黒なりが3－4回連続することはよくあり、何度か実際に経験したことがある人は、そこになにか不思議な力（人によってはそれを「波」と呼ぶが）を感じてしまうからなのだ。
人はルーレットの赤黒のように実はランダムに起きている現象の中にさえ、非ランダム性のストーリ―を見てしまいがちだし、逆に規則正しく赤と黒が交互に出ると、そこに又、何らかの非ランダム的な規則あるいはカジノ側の作為を感じてしまうことがある。
ランダムであろうと装って却って非ランダムになってしまうのは例えば会計帳簿操作による会計不正などの摘発専門家がよく目をつける点だ。帳簿の数字の二桁目に0あるいは8か9が頻繁にでてくる場合、帳簿操作を疑った方がよい―――。
本書には上記の例のように、我々が数学的確率から考えてランダムに起きていると考えている様々な事象の中に潜む、人為的なトリック、あるいは人間の錯覚といった問題の例がいくつも出てくる。
我々は偶然を支配することはできないが、人為的な操作の裏をかくことは可能だという主張に基づき、数学的に実に興味深い例が列挙されており、ギャンブル好きのみならず、株式相場などに興味のある人は、読んでおいて損はない一冊である。
(14年12月発行)