ニュートンのりんご アインシュタインの神 A・A・マルティネス 青土社
ニュートンは、りんごが木から落ちるのを見て、万有引力の法則を思いついた―――小学生でも知っている「常識」だ。しかし、この話は本当か？
ニュートンのりんごの木から採取された株の幾つかは世界各地に移植されていてその内の一つは今も小石川植物園に行くとみられる。ニュートンがりんごから万有引力を発見したとしても、では小石川植物園のりんごの木は、本当にあの「ニュートンりんご」なのだろうか―――。
ガリレオは本当にピサの斜塔から物を落とす実験をしたのか、ダーウィンがガラパゴスのフィンチの嘴から本当に進化論を思いついたのだろうか―――。
本書は多くの偉大な科学業績につきものといってよい、こういった「科学神話」を検証し、それらの科学理論に至る真の物語を探ろうという中々興味深い一冊だ。
いずれのエピソードからも、科学に於ける大発見といった偉業は、たった一人の天才による発見といったものではなく、その発見に至るまでの実に多くの科学者たちの膨大な研究や、仮説という裾野があってこそなされるものだということが明らかにされる。
ダーウィンの進化論も、ダーウィンがマルサスの「人口論」を読んでいたことが、人間社会で起こっていることなら、それは生物界全体で起こっているのではないかと考えていたことで、ガラパゴスに於ける観察が、自然淘汰説に結びついた可能性を示唆するなど、科学ファンにとっての興味深い雑学的知識本として面白い一冊である。
(15年1月発行)