非常識のすすめ 里崎智也 角川書店
著者は、千葉ロッテマリーンズを正捕手としてロッテを2度に亘り日本一に導き引退した。そんな著者が引退後はじめて著した一冊だが、中々よい出来であり、これをきっかけに野村克也氏のように、こちらの方面でも活躍して欲しいと思う
無名に近い徳島の高校から帝京大学を経て、95年にドラフト2位で千葉ロッテに入団、WBCやオリンピックの日本代表メンバーでもあり、パ・リーグのみならず日本野球界を代表する捕手として多くの試合で活躍した。
千葉ロッテのファンとしては、絶対読んでみたい一冊である。
高校時代、大学時代、そして二軍時代の数々の思い出、あるいは引退発表時の心境や、周りの反応といったものから、著者が影響を受けた選手やOBたちの評価等々、野球好きにはたまらないエピソードが盛りだくさんで大いに楽しめる。
現役時代には、あの名捕手といわれた野村克也氏などにはしばしば批判された「強気のリード」といわれる里崎特有のリードが、実は、世間でいわれる「常識」を疑うこと、すなわち世間から「非常識」ともいわれそうだが、実は里崎流のしっかりとした理論と、勝負勘に基づいたリードであったことなどが語られており、なるほど、これこそが、里崎捕手が、最弱チームといわれた千葉ロッテを、日本一に導いた理由かと思わせるものがある。
ボビー・バレンタインをレスペクトしつつも、彼とでさえ自分が納得できない部分については激しく言い争った思い出など、自分という物をしっかりともっていて、その自分の意思を貫こうとする頑固さ、根性のある選手であったことが、本書から思い出される。
里崎が去った後のロッテ捕手陣の弱さを思うにつけ彼の引退が本当に残念に思えてくる。
現在は、解説などで活躍しているが、その解説も中々面白く、マルチな才能を持った野球人である。
(15年3月発行）