憤死 綿矢りさ 河出文庫
19歳で芥川賞を受賞した作家だが、彼女の作品は本書が初めてだ。
初の短編ということであり、彼女の得意とする長編ではないので、本書を読んだだけでは、どういう作家であるのか評価するには資料不足ではあるが、印象としては、若くして嘱望され将来性もあると思われる女流作家の、ちょっとした遊び心で書いた作品、といった感じを受けた。
本のタイトルになっている「憤死」をはじめとする4つの短編が収録されていて、いずれの作品も、ホラーというか「ちょっと不思議な物語」をテーマにしている。
冒頭に掲げられた「おとな」は、わずか4ページ、著者自身と思われる女性が、5歳の時に見たと思われる夢の思い出について語るというだけの話だが、幼女の夢の中という、おとなにとっては全く想像もつかない世界の話としてのおどろおどろしさが、なんとなくじんわりとまとわりつくような感じで、4作の中では一番印象に残った。
残りの2篇、「トイレの懺悔室」「人生ゲーム」いずれも、著者が幼い頃好きだったというテレビドラマ「ミステリーゾーン」風のちょっと不思議な物語であり、「憤死」は、やはり著者自身を思わせる少女とその小中学校時代の友達との間の、表面的には友好ながらも、裏には悪意を孕んだ関係を描いて女性同士の関係というものは、結構、ドロドロとしていて怖いところがあるなぁ〜と思わせるものがあって、作者の才能の片鱗をうかがわせる。
（15年3月発行）