新・戦争論 池上彰/佐藤優 文芸春秋
外務省のラスプーチンといわれ鈴木宗男問題では服役の憂き目にあった情報通佐藤優と、これまたもとNHKの解説員で先の朝日新聞虚報問題でも話題になった池上彰という現在、バリバリの売れっ子情報通二人による政治、国際情勢における情報分析は、そのテーマも、日本の集団的自衛権、ウクライナ問題、イスラムの宗派の違い、イスラム国、北朝鮮問題やアメリカの内政問題に至るまで実に多岐にわたる上に、二人の博覧強記ぶりに驚き、また、裏情報の面白さに時間も忘れて頁をめくり続けた。
ロシア専門家だっただけに、佐藤優による、ウクライナ情報、実はクリミアのウクライナ住民は、なぜロシアにシンパシーを感じ、又、一方ウクライナ政府軍はなぜネオナチのマークを使ってロシアと戦うのか、といった話は、日本のどんなマスコミも一切ふれず（果たして外務省は知っているのだろうか？）にいる、「耳より情報」は、この手の国際情報分析本を読む醍醐味を十分味あわせてくれる。
イスラムの宗派争いの歴史、シリアのサダトの属するアラウィ派とはいったいどのような宗派なのか（イスラムでは異端といえる輪廻転生を唱えるのだとか）、あるいは北朝鮮にとって対日交渉の切り札は、北朝鮮に残留している10万人以上の日本人を全て返すぞ！と日本に迫ることだ等という分析には一々驚かされる。
この二人が、それぞれ外務省やNHKという組織を離れ、今、一般の我々にこの手の情報を伝えてくれることは、我々にとっては少なくともエンターテイメントとして幸運なことなのかもしれない。
(14年11月発行)