古田式・ワンランク上のプロ野球観戦術 古田敦也 朝日新書
古田敦也といえば名捕手、名監督といわれた野村克也の愛弟子といわれ「眼鏡をかけた捕手は大成しない」というジンクスを破り、ヤクルトスワローズの選手としてまた選手兼任監督だったことなどからしても、解説者となった今も、その野球理論は傾聴に値するものが多い。
そんな著者が、ピッチャー、バッター、守備、監督は、それぞれどのような戦術で勝負に臨んでいるかを初心者でもわかるように、易しく解説した一冊であり、たしかにタイトルにうたわれているように、本書を読めば、野球観戦の楽しみが一段上のものになるかもしれない。
例として挙げる選手が、落合や松井あるいは現ヤクルト監督の真中といった古田の現役時代に活躍した、ちょっと「古い」選手が多いところが、敢えて難点といえば難点だが、イチロー、ダルビッシュ、マー君らの現役選手にもいくらか言及しており、又、キャッチャー目線でみた投手、打者の心理についての「裏話的エピソード」も中々ユニークで面白い。
現役時代、リードに迷うとよくベンチの野村監督を見て様々な指示やアドバイスを貰っていたが、ある時、どうしても野村監督がこちらを向いてくれず、困り果てたことがあったが、その時ふっと「あんな名捕手、名監督でも何が正解か分からなくて、迷うことがあるのだ！」と知り、それから、自分も迷っていることにそんなに重圧を感じないでよいのでは〜と思い始めた、というエピソードは、実に面白かった。
(15年3月発行)