沖縄の不都合な真実 大久保潤・篠原章 新潮社
「言論の自由」こそ民主主義社会の根幹であるといわれるが、それでは言論は全く自由かといえばそんなことはない。事実に反すること、個人の名誉を傷つけることなどはいかに「言論の自由」とは言え、制限されるのは当然ではあるが、それ以外にも様々な要因から触れてはならないことがらはある意味では数限りなくある。
「報道におけるタブー」も多くあるといわれている。皇室関係のスキャンダル（菊のタブー）、同じく警察関係の醜聞（桜のタブー）、在日韓国人・北朝鮮人に対するタブー、部落解放（同和団体）利権に関する荊タブー等々であるが、いずれも近年は以前に比べれば随分とそのタブーも解けてきているといわれる。しかし、そのタブー化が益々激しくなり、ちょっと批判的な意見に対してはマスコミ自身がタブー化を手助けしているようにさえ思えるものが、沖縄タブーである。
沖縄戦の際に起きた住民の集団自決は、軍による命令であったのか、軍の命令はなかったのかについて、軍強制は定かではないとする教科書検定に対して沖縄のマスコミ論調は当初は「中立」であったものがその後、これといった確証が得られた訳でもないのに「強制はあった」という論調にかわり、強制はなかったとするドキュメンタリー作家の自費出版でさえ妨害するといったまさに言論の自由への侵害を行い、内地の主要紙、左翼系勢力を巻き込んでのタブー化を進めた。
沖縄普天間の辺野古への移設問題も、今や「沖縄の総意」といわれるものによってそれに賛同するような意見を述べることは完全にタブー視されている。本書はそんな沖縄タブーに敢えて挑戦した意欲的な一冊だ。
移転反対への全島集会なるものが、10万人といわれる参加者があったと報じられながら画像でみるかぎりその半分よりもはるかに少ないとか、辺野古のゲート前のピケ参加者は、もし逮捕されても収入が減ることのない元教員などの年金生活者ばかりであること、あるいは本土からかけつけたプロ反対運動家であること、あるいは実際には、普天間基地用地の地代を収入にしている沖縄県民は「普天間基地廃止」という「県民の悲願」とは正反対に基地存続を願っていること、あるいは辺野古移設で大きな収入が期待される周辺住民の8割は移設大歓迎であることなどは、沖縄あるいは基地タブーとして触れられることはないが、実は多くの人がうすうす感じていることではある。
沖縄には日本の米軍基地の70％以上があり、沖縄は多大な負担を強いられている、という神話も実は米軍専用基地のことであり岩国や横須賀などの日米共同使用を入れれば、沖縄の米軍基地は20％に下がるという事実を報じるマスコミはいない。
しかも、その「沖縄の負担」の代償として沖縄が国から得た金額は既に累計10兆円を超えており、その復興資金なくして沖縄の経済はなりたたないという事実、又、その代償のほとんどが沖縄の保革そして官一丸となった既得権益者につかみ金的に与えられているという事実、あるいはそれが沖縄における貧富の格差をますます広げていることなどもタブーとなっているというのだ。
もっとも、本書がいくらこういった沖縄タブーに触れたところで、沖縄のあのタブーが変わることはないだろうという虚しさはあるが―――。
（15年1月発行）