書生の処世 荻原魚雷 本の雑誌社
立花隆は大学卒業後、文芸春秋に入社したがプロ野球を担当させられ読みたい本を読む時間もないことから、退社を決意し以後、大好きな読書に全時間を割くという生活をはじめたという。
彼の場合、その読書量もあって数々の文筆活動で一家をなした訳で「読書」はきわめて有意義であったということにもなるが---。
立花隆に限らず「本の虫」といわれる人は世の中にいくらでもいるし、趣味が読書という人も加えたら数限りないといってよいだろう。
読書は「教養を高めるため」だとか「知的好奇心を満たす」といった「有意義な行為」と見る向きも多い一方では、「単なる暇つぶし」「生産性がない」「恒産なき行為」などというネガティブな見方だってある。（いまだに、読書はよくてもマンガはダメなんていう価値観も結構大手を振っている）
そんな意味でいうと本書の著者、荻原魚雷の読書はどういう範疇にはいるのだろうか。
定職についたことはなく、人付き合いは下手、酒と本が好きで、他人からみたらぐうたらな日々を送っている―――という一方では、こと読書に関してはやたらと熱心で古本屋めぐりもその熱心さは「ぐうたら」とは縁遠い。
さしあたって食っていけさえすれば、後の時間は、寝るか、酒を飲むか、本を読んでいたい―――というのだから。「ぐうたら」なのか「ストイック」なのかなんとも言い難い人物である。
そんな著者のなんともユニークなエッセー集だが、自らの生活や、読んだ本の感想、日々雑感等々とりとめのない題材での縦横無尽なエッセーには、自分も読書という行為を一体何でやっているのかをあらためて考えさせられるきっかけを貰ったような気がした。
(15年6月発行)