プラトンとの哲学 納富信留 岩波書店
「西洋哲学の歴史とはプラトンへの膨大な注釈である」といわれるほどに、プラトンの思想が西洋哲学に与えた影響は大きい。
そのプラトン思想は、彼の著作である「ソクラテスとの対話」あるいは「国家」などにも見えるように、「対話」という問答形式で示されているように、「これがプラトン哲学である」という形のものではなく常に人々に対して「君はこの問いに対してどう答えるか？」を問いかけるものであり、すなわち「プラトンの哲学」ではなく、一人一人に「プラトンとの哲学」をなげかけるものであるという。
このプラトンの問いかけにプラトン以降の二千五百年間、様々な形で答え、そこからさらに新しい問いかけがなされる―――という形で思索されてきたのが西洋哲学であるというのだ。
プラトン哲学を系統立てて学んだことはないだけに、ある意味ではプラトン哲学入門のようなつもりで読んだのだが、本書の語り口は平易でとっつき易いが、読んでいくほどに、「プラトン」とは相当に奥が深そうであり、ちょっとやそっとの相手ではないのではないだろうかという、諦めの気持ちにもならされてしまった。
プラトンといえば「無知の自覚」が有名だということは知ってはいたが、これは禅でいう「無知の知」と相通じるものがあるように感じた。諦めないでもう一度じっくり取り組んでみる必要はありそうだ―――とは思うが－－－。
（15年7月発行）