子供の頭を良くする勉強法 伊藤真 ベストセラーズ
しばしば子供の教育の場で使われることわざに「嫌がるロバを池の淵まで引っ張っていくことはできるが、水を飲ませることはできない」というのがある。
「勉強しろ！」と強制的に机に向かわせしばりつけることもできるかもしれないが、本人が勉強する気になっていなければ、なんの成果も得られないことは、そういった子供時代を過ごした経験のある親たちほぼ全員が思い当たる節があるにもかかわらず、ついつい、「勉強しなさい！」「ゲームなんかばかりしているのじゃない！」と我が子に怒鳴ってしまう、等という経験があるのではないだろうか。
伊藤塾という司法試験指導塾の塾長をやっているという著者による我が子の指導法に悩む親たちへの指南本である本書は、「我が子の成績をよくしたい！」という親たちの間で人気があるようで、ベストセラーの一角をしめているのだとか。
基本的には、「いかにしてロバを水を飲む気にさせるか」すなわち「子供が、いかにしたら自分から勉強する気になるか」を指南している本、ということであるが、その内容は、ある意味では至極常識的というか、当たり前のことが書かれているに過ぎないとは思うが、確かに、実際に子供相手に、これらを実行していないで、「強制的に池の淵につれていく」ことばかりやっている親たちが、いかに多いか、ということなのかもしれない。
そもそも子供に求める「頭のよさ」とは一体なになのか。頭のよさとは「テストで高得点を取ること」とはき違えている親たちにとって、著者のいう「それは、これからの人生を（生き抜く力）を身につけさせることだ」という主張は、たしかに目からウロコの感じがするのではないだろうか。
教育とか「人を教える」という現場にはほとんど縁のなかった身にとっては、当たり前のことが書かれているようでいながら、教育のみならず、色々な場面で使えそうなアドバイスであるようにも思えて中々面白い一冊だった。
(15年6月発行)