ドラフト1位 澤宮優 河出書房新社
副題が「九人の光と影」とあるように、プロ野球ドラフト１位でプロ野球界に入った九人を取り上げ彼等の野球人生においてドラフト１位という称号がもたらしたその後を描いた中々面白いドキュメンタリーである。
ドラフトのやり方は、発足当初から幾度も変わってきてはいるが、いずれにせよ毎年12球団それぞれには「ドラフト1位」という輝かしい勲章をもって入団する選手がいることにかわりはない。
すなわちプロ野球では、毎年12人のドラフト1位が誕生しているのだが、その栄光のドラフト1位選手が、皆、5年後、10年後に活躍している訳ではなく、むしろ松坂や大谷、あるいは藤浪のように期待通りの活躍をする選手は、決して多くはなく、逆に一軍の試合にさえ出場できず野球界を去っていった選手もいるのだ。
本書で取り上げたドラフト1位の9人はどちらかといえば、ドラフト1位の栄誉を得ながらも、結局実践の場では期待ほどの栄光をつかめなかった男たちである。
後半の野球とのかかわりは、阪急のマスコット人形のぬいぐるみであったという島野、鳴りもの入りで巨人に入りながらも結局「未完の大器」「二軍の本塁打王」のままで終わり、後にスカウトとして活躍することになった慶応の大森、あるいは巨人のドラフト1位指名を拒否した愛知学院の小林秀一などのその後の人生など野球ファンにとっては興味の尽きない一冊だ。
(08年12月発行)