ヒトはこうして増えてきた 大塚柳太郎 新潮社
人類が誕生以来、幾種かの人類が地上に現れたが、2万数千年に絶滅したネアンデルターレンシス以後、ヒト科ホモ属に属する人類は、我々ホモサピエンスのみである。
そのホモサピエンスの誕生は20万年前といわれるが、誕生した直後のこの種の人口はわずか5000人程であったといわれる。
その、地上で唯一現存する人類であるホモサピエンスは、現在、72億人という数に増えており、なおこの増加傾向は今なお続いている。
世界各地で人口の将来推計がなされているが、65の人口推計の平均値によれば、地球の人口維持力は人類が120億に達するまで今後も増え続けるとも言っているというから、まだまだ人類は増え続けることは確実だ。
本書は、人類誕生から今日までのヒトの増え方の歴史を辿ることによって我々人類の壮大な歴史を、地球自然史的に、また、人類文化史的に、あるいは歴史的に解き明かそうというもので、「人類のビッグ・ヒストリー」となっているという何とも意欲的な著作であり、興味は尽きない。
我々ホモサピエンスがアフリカの地で誕生した20万年前には、女性が生涯で出産する子供の数は、4.4人程度だったが、生まれた子供が1歳の誕生日を迎えるまでにその1/4が死亡する、あるいは出産時の女性死亡率が高いなどの事由があって、その平均寿命はわずか20歳程度にすぎなかったという。
それが、その後、定住と農耕の開始、あるいは食糧生産率の向上などもあって、今から6万年程前には、総人口50万人、1万2千年前には500万人となり、5500年前には遂に1000万に到達したという。
その後、都市化による人口集中による感染症リスクの増大や、自然環境変化による食糧不足といった人口減少要因もあって停滞期を幾度か経験しながらも、着々と増え続けた人類は、1800年前には1.6億、800年前に3.7億に達した。
更には15世紀の新大陸発見により、トウモロコシやイモ類などの食糧増産、アフリカからの大量の奴隷移住といった要因が加わることで、産業革命などの要素もあって、1950年には25.3億に達している。
それ以降の世界人口の増加は自分自身経験していることだが、子供の頃、「世界の人口30億」と教わったものが、それからわずか半世紀ちょっとで72億に到達し、更に50年後には100億を突破するというのだから―――。いやはや、驚くばかりである。
往々にして「世界人口爆発」などとカタストロフィックに語られることの多い人口問題だが、逆に考えれば50年前にはまさに恐怖のシナリオでしかなかった世界総人口72億が今実現しており、まだ人類が絶滅していないことを考えると―――。いや〜あ、色々考えさせられる人口問題である。
(15年7月発行)