血別 太田守正 サイゾー
「暴排法」などの規制により「暴力団、ヤクザ礼賛的な記事はけからん」といった圧力が出版社などにでもかかっているのだろうか、かつては週刊誌、得に実話誌といわれる雑誌の目玉の一つであった「ヤクザ物」と言われる記事が少なくなっていたように思うが、本書によればもう一つの事情は、山口組が打ち出した内部の事情を外に漏らすな！という「鉄の掟」ができたことにもあるという。し
いかに、「ヤクザ問題に詳しい」ことを売りにしているライターとはいえ、内部からの情報リークがなければ、どうしても、取材に基づかない類推記事、あるいは場合によっては捏造記事が主になってしまい、そのことで、益々この手の記事の信頼性が失われ結局は読者にあきられてしまったということもあるようだ。
そんな時代が長く続いただけに、今年起きた日本最大の暴力団である山口組の分裂騒動は、「社会的事件」として一般のマスコミも取り上げやすくなっている「暴力団事情」という訳て、堂々と報道できる久々のチャンスということのようで、かなり多くの週刊誌が「大喜び」でかつてのように、ヤクザの内幕物特集を組んでいるし、一般の関心もかなりたかいようだ。
かつて東映のヤクザ映画が大人気だったように、やはり日本社会の本音の部分では、ヤクザの世界、という異質なアウトロー世界に対する「憧れ」のようなものがあるからなのか、ただ単に野次馬的関心が高い所為なのかは定かではないが---。（山口組とそこから分裂した神戸山口組との間で、早くドンパチがはじまらないかなぁ〜、などといった願望を込めたかのような、センセーショナルな見出しも踊っている）
2005年、山口組は5代目組長から現在の6代目司忍組長に代替わりしているが、この政権交代が実は現6代目によるクーデターであったとする説があり、そのクーデターの原因についての様々な記事がこの間、週刊誌ネタや告発本では随分盛んだったらしい。
その中には、あまりにも5代目が無能で強欲であったために、6代目が引導を渡したのが交代劇の真相だとするものがあるが、もちろんこの真偽のほどは知る由もないだけに、マスコミには今も、様々なことが言われている。
まあ、一般社会にとってはどうでもよいような話ではあるが、今回の神戸山口組分裂騒動に、この5代目、6代目の交代劇の遠因があるという説が流れているだけに、5代目の右腕ともいわれ今は引退している本書の著者の「実は、5代目ほど立派な人はいない、今の山口組に関するヤクザ記者たちの言説やでっち上げは許せない！」という本書の主張は、まあ、かつての「アサヒ芸能」の記事を読むような面白さはある。
もちろん、果たして真相はどうなのか？を更に知ろうとするならば、本書の著者とは正反対の主張をしている様々な記事や告白本を読む必要もあるだろうし、それはそれで、結構、おもしろいかもしれないが－－－。
ヤミ社会の事情などに興味ある人たちにとって、このタイミングで出版された本書は、大いに興味深い内容であることは間違いない。
（15年7月発行）