CIA諜報員が駆使するテクニックはビジネスに応用できる J・C・カールソン 東洋経済
「スターバックス」「バクスターインターナショナル」などの一流民間企業で働いた後、2001年より、CIAで 10年ほど諜報員として現場の諜報活動に従事した著者による、ビジネスでも役立つインテリジェンス技法の解説書である。
著者が就職して初めてCIA本部で出会った同僚諜報員たちは、ハリウッド映画の007などのスパイ映画に出てくる諜報員のイメージとは全く違う、ごく目立たない、ごくありふれた人達ばかりだったという。
すなわち国家機密を暴き、あるいは守る立場にいる彼等は、いかにもそういう仕事に就いていると思わせないだけのテクニックを身に着けながら、深く社会に情報網をめぐらすためには決して目立ったところがあってはいけないというのは、考えてみれば当然の事だ。
CIAの駆使する、そういった技法の数々は、なにも諜報活動だけの独壇場ではない。ライバル社との競争に打ち勝つ、あるいは出し抜く際にも十分使えるし、社内での同僚達といかに協調しながらも、時には彼等を出し抜くかといった技法は、企業に於ける昇進や出世に直結する訳で、ビジネスマンにとっての技法ともなり得るというのだ。
もちろん、いくつかのCIA技法は非合法なものもあり、そういった極端な技法については、ビジネスでは必要ないし、そこまでやってはいけないといった注意書きにもおこたりない。
本書の中でも特に注目すべきは、一般社会でも使える対人交渉術について述べている部分だが、ある意味当然と言えば当然であるが、その基本に置いているのが、「ウソをつかない」（かといって正直に告白する必要もない）こと「誠意を持って相手と当たる」ということだと再三述べている部分だ。
逆に、信頼できる、ウソをついていない、と思われれば相手は、何気ない会話の中で実は無意識の内に内部の情報を外に漏らしてしまう、といったことをするということでもある。（実は情報というものは、何気ないチャンスに幾らでも手に入るものでもある）
ただ、本書を読んで感じたのは、世界一の諜報力を持つというCIAのテクニックの凄さといったものは実によくできている---とは思えるものの、果たして平和ボケ日本が、そんな高度なスパイ的な活動を本当にできるかどうか―――となると、やはり本書の内容も現実性は（今の日本では）難しいようにも思得る点だ。
（14年7月発行）