無と有の物理学 ニュートン編集部 ニュートンプレス
「無と有」といえば、哲学的、仏教的にもあるいは数学論、物理学においても永遠のテーマといえるものである。
科学誌「ニュートン」らしく、本書でも無と有を1．数 2.存在 3.空間 4．宇宙誕生 ５.素粒子の章に分けて解説しているが、カントールの無限の概念などを含めることによって、それぞれの章で言っている無と有に関する解答をもってしても尚、あかし切れない謎を秘めた存在としての特に「無」が語られているように思えてならない。
例えば、数に於ける無、すなわち0の概念は実はどのようなものなのか、0は微分に於いては基本的には、永遠に到達できないものとなっているにも拘わらず、数直線上ではプラス１とマイナス1の間の中間点としてあらわされること（すなわち1次元において0はあたかも存在しているように見える（もしそうでないとしたら1次元は０次元と変わりないものになってしまわないか）ことの不思議さ。
あるいは宇宙に於ける「真空」にも常に対消滅を繰り返す存在があること（すなわち、宇宙空間には無は存在しないかのように思えてしまう）と、ビッグバン以前（そんな言い方が成り立つかどうかは不明だが）は、「無」が支配していたといわれる宇宙との関係は一体、どう理解したらよいのか―――。
どんな本を読んでも、どうしても理解できない「無と有」特に「無」についての興味は尽きることがない。
（15年8月発行）