習近平の権力闘争 中澤克二 日本経済新聞社
長く皇帝が治めた国だけに、中国共産党が支配するようになったからといって中国のその根本の統治システムは変わらない。
国家主席という肩書の一人物、すなわち現代の皇帝が治めてこそ中国という13億人が住む世界一の人口大国はどうにか統一を続けることができるのだろう。
毛沢東しかり、鄧小平しかりであり、今一つ絶対的な権限を持つ皇帝とは言えなかったけれど、華国鋒や江沢民にしてもなり損ねの皇帝だったとかんがえれば中国近代史は理解しやすい。
習近平は久々に出てきた強い皇帝、といってよいのではないかというのが、著者の主張だ。
習近平は党主席の座に就いて以来、実に巧みに「反腐敗」などの政治運動を展開することによって政敵を駆逐し、その反腐敗という庶民受けするスローガンを使うことによって自らの権力基盤を、毛沢東同様に「国民の支持」に置こうとするなどしている。
著者は習によるこのような運動方法を「ミニ文化大革命」と命名している。
習は、この「ミニ文化大革命」の名を使い、その一方では大学に対しては「普遍的価値」、「報道の自由」「公民社会」等を論ずることを禁じ、且つ、メディアに対しては強力な言論統制を行うなど強権的独裁への基盤固めを行っている。
そんな習の外交・安全保障戦略は、中国を経済大国、軍事帝国へと推し進めようという彼の野望を剥き出しにしているという。超一級のチャイナウォッチャーである著者による、最新の中国事情解説は実に詳細だし大いに納得がいくものだ。
（15年9月発行）