資本主義の終焉と歴史の危機 水野和夫 集英社
一昨年3月に発行された本書だが、日銀がついにマイナス金利に踏み切ったにも拘わらず円高、株安が進み大恐慌の一歩手前かとも思えるような市況になっている最近の状況を見るにつけ、発行から1年たって益々、本書で著者が指摘した予言が、気味のわるいほど当たっているような気がしてならない。
著者は、現在世界的に進行するゼロ金利こそが、実は資本主義が遂に最終局面を迎えつつある証左であるという。
金利とは元々、資本を投資することによって得られる「利潤」のことであり、ここ3世紀の間、資本主義は常に新しい市場を開拓することによって「利潤」を得ることによって維持されてきたが、遂にもうこれ以上、新しい市場、すなわち利潤を得ることのできる新天地が得られなくなった結果生じたのがゼロ金利なのだと主張する。
例えば日銀はゼロ金利政策を取りさえすれば、市場に溢れた資金は止む無く新しい投資に向かうはずで、そうなれば設備投資が行われるようになり、その設備投資に資金が使われることによって、資本は結果的に利潤が得られるはずだと考えているが、現実には、いくら金融政策によって低金利（あるいはゼロ金利やマイナス金利）を行っても、余って市場にあふれだした資金は、一向に設備投資に向かわず、資金は超低金利の国債や公債に回ってしまっている―――というアベノミクスの現状をみるにつけ、著者がいうとおり、「もはや、市場には新たに利潤を得られる余地が無くなっている」のは事実ではないかと思えてくる。
そもそも、新規市場を求め開拓することによって、利潤を得ることで回転してきた資本主義にとって、世界中どこをみてももはや新規市場がない！という状況は、すなわち「資本主義の終焉」を意味しているのではないか―――という著者の分析は衝撃的だ―――。
資本主義の今後の展開に関する著者の悲観的な分析にも納得できる部分が多い衝撃の一冊といえるが、それでは資本主義の終焉を迎え、世界経済はどうしたら破滅を避けることができるか―――となると、著者の論調が、「景気優先の成長主義から脱して新しいシステムを構築すべし」と急に具体性を欠き、又、その「新しいシステム」なるものが、どのようなものなのかについては途端に「筆者の能力を越える！」と突き放されてしまうところが、何だか益々不安にさせるところがある。
（14年3月発行）