地球はもう温暖化していない 深井有 平凡社
「地球は温暖化している」「そしてその原因は人為的な二酸化炭素の排出である」、この二つの前提を絶対的なものとして認め、したがって「人間活動による気候変動（温暖化）の危険性評価に科学的根拠を与える」事を目的に掲げているのが国連機関であるIPCC（気候変動に関する政府間パネル）であり、これに積極的に賛同することを表明している日本政府は、温暖化対策費として年間3～4兆円を支出し、そのことによってGDPを1～2%
押し下げる、という負担をしているのだが、それでも、まだ「日本の温暖化対策は生ぬるい！」という指摘が渦巻いている―――というのが現状だ。
しかし、この二つの前提（「地球は温暖化している」「そしてその原因は人為的な二酸化炭素の排出である」）には科学的な根拠がないことを本書は、具体的な資料に基づいて実に丁寧に示している。
天体は地球を中心に運行している、という地動説が頭から信じられていたコペルニクス以前、人々は地動説に基づく天体運行の仕組みを説明するために、実に膨大な理論を構築したが、それでもそんな理論から導かれている現実の天体運行との差異に頭を悩ませていた。そこに、登場したのがコペルニクスの天動説だ。太陽を中心とした天体運行という理論を採用すれば、いままでどうにも説明のつかなかった天体の運行が、ものの見事に説明がついてしまう―――そう説いたのだが、もちろん、この理論は長く聖書による地動説を信じてきた無知蒙昧な人々の抵抗にあって、しばらく受け入れられることは無かったのだ―――。
科学的に照明されていない地動説を唱えた人々と、おなじように「地球は温暖化している」「そしてその原因は人為的な二酸化炭素の排出である」という科学的な証明がなされていない前提を認めることを掲げたIPCCの数々の警告やら勧告を信じることは、まったく同じではないか―――というのが本書の主張だが、その論拠に挙げられた数々の科学的根拠や、IPCC運動におけるデータ捏造や改竄、あるいは資料の捻じ曲げた解釈の数々は、「大げさにいわれる地球温暖化の証拠といわれるもののうさん臭さ」（例えば、島の人口増加による地盤沈下を―――温暖化による海水面の上昇とすり替えているツバルなどの問題や、太陽活動の低下によるここのところの寒冷化傾向を示す数字の無視といった）を薄々感じている多くの温暖化懐疑派にとっては、待望の一冊といえる書ではないだろうか。
著者によれば、この18年間、地球の温暖化傾向はおさまっており、太陽活動などのデータからすれば、地球はこれからはむしろ寒冷化に向かうという。
さらには、太古の時代から二酸化炭素濃度濃いほど、藻類や植物という地球生命のエネルギー製造生物が繁栄してきたこと、さらには二酸化炭素濃度は温室効果とは関係ないことといった「当たり前の常識」を人々がとりもどすべきだ！という指摘などは、まさに世の中に「目を覚ませ！」と言っているような貴重な警鐘と響く。
（15年10月発行）