ニュートリノで探る宇宙と素粒子 梶田隆章 平凡社
難しいことを易しくかみ砕いて解説できる人は、その難しいことを本当に理解している人である―――というのは間違いない。
自分は完全に理解しているかもしれないが、それを上手く素人に説明できない人というのは山ほどいるし、自分が分かっていない人がいくら説明しても他人に伝わる訳もない。
「素粒子ニュートリノに質量がある」ことを突き止め、昨年のノーベル物理学賞を受賞したのが本書の著者、梶田さんであり、ノーベル賞受賞のニュースが伝えられて以来、そもそも「素粒子ニュートリノに質量がある」とは一体どういうことなのか、とか、あるいは「それがどのような実験によって証明されたのか」といった我々素人がもつ疑問に答えてくれるには、梶田さんがまさに「最適の人」なのだが、本書によるその解説は、素人にも実に分かり易いし丁寧だ。（当然のことではあるが）さすがに、梶田さんという人、本当に最良の科学者であり、最良の教師なのだなぁ〜と思う。
さらには、例の仕別けの時の蓮舫さんではないけれど「素粒子ニュートリノに質量があることが分かったからといって、何の役にたつのですか！」などという人たちに対する、本書に書かれた梶田さん流の答えは、実に説得力があり、「二位じゃだめなんですか！」と叫んだ蓮舫さんのみならず、概して研究というものに対して貨幣的価値やら、コストばかりを持ち出す今の風潮に対する「喝！」という声に聞こえて小気味いい。
梶田さんによる「重力波」の解説なんていうものも是非聞いてみたい。
（15年11月発行）