地球の履歴書 大河内直彦 新潮社
以前この著者による地球温暖化を扱った「チェンジング ブルー」を読んだことがあるが、今や科学というよりは政治問題化してしまった地球温暖化問題を、肯定派、懐疑派いずれの側にも偏ることなく地球物理学、気象学等々の科学者の立場から実に冷静かつ公平に論及したその誠実な姿勢に感心した覚えがある。
本書もまた前作同様に、科学者としての立場からの論述であるが、扱う対象はもう少し幅広く、熱球誕生、生物の誕生といった根本的な問題、そしてその中で人類の科学知識が、いままでの間に何をどう解明してきたのかを、様々な歴史的事例、あるいは探検家、冒険家の事績などをえがくことによって説いてくれる。
全体は独立した8章にわかれ、それぞれが科学エッセーというべき章からなっているが、文章もエッセイスト的に読み易い美文であり、更には驚くほどの著者の碩学振りもあって、何とも引き込まれる一冊になっている。
海面や海底という人類にとって長く全く未知の世界が、どのように解明され今や我々は何を知っているのか。
海の塩分はどのように蓄積されてきたのか、しかも数十億年の塩分集積があったにもかかわらず、海水の塩分は全時代を通じてなぜ一定の濃度を保っているのか―――。
それぞれ独立した章で成り立ってはいるものの、全体を通じて地球46億年の歴史が描かれており、そんな星に生まれた我々自身の幸運さがよく理解できる。
（15年9月発行）