都市をたたむ 饗庭伸 花伝社
2015年の国勢調査の結果が先日発表されたが、日本の人口はその5年前2010年に比べ95万人減と、遂に人口減社会の到来を告げる結果となったという。
出生率、死亡率の数字に基づく人口推計は、当たらないことの多い予想、推計の中では比較的当たるといわれており（考えてみれば、当然の話だが）、確かに、十数年前、いやそれ以上前から人口減社会の到来は言われていたことではあるが、現実にこの数字を突きつけられるとドキリとする。
人口減社会の到来は、今まで増え続け、拡大しつづけてきた都市の成長が止まる、ということを意味しているわけで、今後、人口減に伴う都市の縮小にどう対処していくべきかという問題を社会に突き付けてもいる。
確かに、我が実家も両親が他界して以来、年数回しか使わない半ば空き家状態になっているし、実家の周辺には同じような空き家がふえつつある。そればかりではない、30数年前の新興住宅地に建つ我が家周辺でさえぼちぼちと空き家が目立ちはじめた（なにしろ、町内に住む小学生の数が、数十年前に比べて激減している）
人口が少ない田舎の過疎地となれば、一人当たりのインフラ費用が賄えなくなることもあって、いわゆる人口の集約化といった方法も考えられるかもしれないが、大都市郊外の歯抜け状態になっていく空き家問題は、それぞれの所有者のプライベートな事情が複雑に絡んでおり集約化にはまったくそぐわない。
したがって「歯抜け状態」のまま空き家が点在するという、駅前シャッター通りと同じ運命をたどる可能性は大だ。
著者はこの「歯抜け状態」をスポンジ化とよんでいるが、まさに言い得て妙である。
著者の問題提起部分は自分達の回りでも起こっていることであり、大いに共感できるのだが---残念ながら、さてそれではそういったスポンジ化にどう対処していくべきか―――という提言部分になると、突然、理想論的になりがちで、具体性を欠いているように思える。
スポンジ化の中でどうやってインフラを維持するのか（しないのか）、治安の問題をどうするのか（どうにもならないのか）、課題は山積だ！ということを知らされ、呆然とせざるを得なくなる一冊、ということなのかもしれない。
（15年12月発行）