なぜ男は女より早く死ぬのか 若原正己 SB新書
男と女という性の違いは何か、そしてなぜそのような違いがあるのか―――生物学的な男女の性に関する疑問は尽きることは無いが、人間以外の生物に於ける有性生殖の問題から説き起こし、他の哺乳類のオスとメスの違いと、人間の男女の性の違いの共通点、異なっている点など実に多彩な問題に言及していて興味の尽きない一冊である。
以前、新生児の男女の比率がやや男の方が多い理由は、新生児、乳幼児に於ける死亡率が男の方が高く、生殖年齢に達した年代には男女比率が均等になるように進化した結果だ―――といった説明がされていたように思うが、本書では男の子の性を決定するＹ染色体を持つ精子が、Ｘ染色体を持つ精子より小さいために、身軽であり卵子を目指す早い者勝ちの競争に勝つ確率が高いからだ―――と述べられており、なるほど、と思ったし、男性という性を決定するＹ染色体上にある遺伝子の数がＸ染色体上にある遺伝子の数に比べて大幅に少ないことも、寿命に大きく影響している―――従って男の方が女にくらべて早死にする可能性がたかくなる―――という説明も、説得力があるように思った。
有性生殖という生殖の方法が人間のような男と女、他の哺乳類のオスとメスといった２性だけだと思っていたが、実は性が3あるいは4と多数ある生物がいる、といった様々な性に関するトピックも実に面白かったし、同性愛を生物学的な理由で考えるというトピックもタイムリーで最初から最終ベージまで飽きさせない一冊だ。
（13年12月発行）