見えないファインプレー論 仁志敏久 SB新書
巨人と横浜で２塁手として活躍した著者は、引退後つくば大学大学院で体育学を学ぶなど理論家の野球解説者として活躍中だが、そんな著者の一味違った野球論だが、みずからの経験談に基づく「野球の見方」は中々参考になる。
一見平凡そうに見えるプレーであっても、その背後に潜むプレーヤーたちの事前準備、思惑といったものを知れば、これからのプロ野球観戦が一段と興味深いものになるだろう。
最近、セイバーメトリックスというメジャー起源の様々なデータを駆使した野球戦術論が盛んだが、著者の野球へのアプローチはセイバーメトリックスにたいして批判的とまではいえないが、セイバーメトリックスのデータでは表し切れないような選手同士の気配の機微といった点にまで言及しておりなんだかセイバーメトリックス信者になりつつある評者の野球観をちょっと修正してくれるようなところもある。
チームで一番の強打者を２番バッターに置いた方が得点確率が上がる―――という説など中々目を引くし一理ありそうにも思えてくる。
（15年12月発行）